先日報告した通り、今更感はありますがPowerShot G1 X Mark IIIを購入しました。
プレスリリースには、『APS-CサイズのCMOSセンサー、大口径ズームレンズ、映像エンジンDIGIC 7の連携により、軽量コンパクトボディーながらフラッグシップモデルにふさわしい高画質を実現しています。』と書かれています。このカメラは後継機がなく2023年6月で生産終了しています。コンデジにしてはかなり高価だったのであまり売れてなさそうなイメージがありますが販売期間6年弱と長かったせいか中古市場で玉数はそこそこあります。7年前のカメラですのである程度割り切って見ていきましょう。
見た目はコンデジでこれでAPS-Cサイズのイメージセンサが入ってるのか?と信じられない位小さいカメラです。ポケットに入るサイズとは言えないものの鞄の片隅に入れておくのであれば十分小さいと言えます。
筐体がプラスチック製、操作部である鏡筒やダイヤル類は金属製です。筐体についてはデジカメWatchのインタビュー記事内で内側が高剛性の樹脂素材、外側が柔らかい樹脂材料と説明されています。外側はおそらくエラストマーで肉厚が薄く硬度が高いのでゴムに比べるとどうしてもどうしても底付き感が出てしまいます。下位モデルのG5X MarkIIやG7X MarkIIIは筐体も含めて金属製で質感で劣るのは残念ではありますがこの素材のおかげで小型軽量と防塵防滴が実現可能になったことは間違いないでしょう。
EVFは有機EL0.39型約236万ドットでチラツキもなく高精細で見やすいので構えて撮りたくなります。EVFのアイセンサーの反応タイミングも良くて気持ちいいです。
操作性はEVFを覗いて撮ろうとするとボタンレイアウトが窮屈で使いにくいですが小さくすることを優先した結果なので仕方がないでしょう。小さくてもボタンの数を減らさずに1ボタン1機能をしっかりと確保しているところは素晴らしいです。これなら普段デジタル一眼を使ってる人でもすんなりと使いこなせると思います。EVFを覗きながら液晶画面をタッチパッドのように使ってフォーカスポイントを移動するタッチ&ドラッグAFが結構快適でした。筐体が小さいので液晶画面に親指が届きやすいからだと思います。
コマンドダイヤルは回転トルクが低くクリック感も少ないので不用意に回ってしまうことがあります。スムーズリングはローレットが浅くこれまた回転トルクが低すぎで誤作動が発生しやすくG7X MarkIIの綾目ローレットでしっとりとした感触、デクリック機能までついてるのと比べるとコストダウンされていますし、使いにくくなりました。露出補正ダイヤルだけは適切なトルク感でした。
AFは早いです。反応が良い分暗所等でのギブアップも早いです💦。AF測距できる範囲が撮像画面の80x80%と当時としては画期的ではあるものの今となっては時代遅れで制約に感じてしまいます。シャッターボタンは半押し時にクリック感の無いタイプでこのクラスで採用は珍しく、デジタル一眼ユーザーには受け入れやすいと思います。
イメージセンサはEOS M5/M6で使われているものとスペックは同じですが、デジカメWatchのインタビュー記事によると厳密にはEOS用のものとは異なり、コンパクトデジタルカメラに最適化したものを使用しています、とあるのでこのレンズに合わせたマイクロレンズを搭載したイメージセンサを使っているものと推測します。
フルサイズ派の私にとってAPS-Cサイズのイメージセンサに標準ズームという組み合わせでの経験が最近はほとんどありません。フルサイズの写りを見慣れた目で見ると像の均一性はあるけどシャープ感に欠ける描写で全体的に眠い印象を受けました。EOS M5/M6にEF-S 15-45mm F3.5-6.3の作例を見ても同じような印象でしたので別にこのカメラが特別悪いということではないようです。
開放F値は24mmでF2.8、28mmでF3.2、35mmでF4.0、50mmでF5.0、72mmF5.6です。特に望遠側は絞り開放でも暗いので被写体が浮かび上がるような盛大なボケは期待できません。もっとも最近はレタッチでボケを後から盛ることもできますので後処理に頼ってしまうというのも手だと思います。
最短撮影距離は広角端(24mm)でレンズ先端から0.1m、望遠端(72mm)で同じく0.3mで望遠側に行くほど撮影距離がどんどん伸びていきます。最大撮影倍率は公開されていませんが広角側が最も倍率が高いです。EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STMの望遠側で撮像面から0.25m、最大撮影倍率0.25倍には遠く及びません。とはいえ立体感が高い描写は1インチセンサとは格段に違います。ボケ味は綺麗とは言えませんが非球面を多用したレンズにしては癖もなく良好という印象です。
逆光の写りはコントラストが低くてハイライトには滲みも見られのっぺりとしたセンササイズの小さいコンデジっぽい写りでおやおや❓って仕上がりになります。こうなってしまうとレタッチでも救いようがないです。原因はレンズ鏡筒内の反射と思われます。
付属の電池はNB-13Lで他のPowerShotGシリーズと共通ですが、電圧が3.6Vでデジタル一眼で使われている7.2Vの半分しかありません。実際に使用しても電池の減りは早い印象で1日これ1台で撮り歩くのであれば予備バッテリーは必須と感じました。
小型軽量かつ写りはAPS-C+標準ズーム同等と、コンセプトである本格的な写真表現を求めるユーザー向けに開発されたレンズ一体型カメラに仕上がっていることは間違いないです。小さいが所以に色々と弄ろうとすると少々面倒くさいですが個人的には許容範囲でした。発売当時はEOS M5やEOS Kiss Mより高い価格でしたので、レンズ交換できなくていいからとにかく小さいカメラが欲しいという人以外は購入しなかったと思われます。