NIKKOR-H・C 5cm F2を購入しました。
ニッコール千夜一夜物語によれば NIKKOR-H・C 5cm F2発売は1946年。L39用とSマウント用があり1948年までは硝材の入手性に問題があり何度か設計変更を行っていましたがそれ以降は問題が解決して安定して生産できるようになった、と書いてあります。入手したレンズはL39マウントで製造No.が6桁なので1960年以降の生産です。
レンズはクモリが僅かにあるだけでカビはなく綺麗。残念ながら絞り羽根は油染みが結構ありましたが絞りリング、ピントリングの動作は滑らかで年代を考慮すれば程度の良いものでした。
このレンズの構成は3群6枚。典型的なゾナータイプです。
ゾナーは米国特許US1998704(1935年4月25日)で出願されています。
レンズ構成はSonnar 50mm f2やJupiter-8とよく似ています。
Jupiter-8 |
Sonnar 50mm F2をベースに現地で入手可能な硝材で再設計したのがこのレンズです。要するにやってることはJupiter-8と同じです。鏡筒の造りはかなり良いです。
フォーカスリングは無限遠でロックされ、繰り出していくと3feetでクリック感があり最短撮影距離まで繰り出されます。コンパクトながらずっしりとした重量感があります。絞り羽根は10枚で綺麗な形状を描いています。最短撮影距離は1.5feet(約0.45m)とレンジファインダー用レンズとしてはかなり寄れます。
このレンズというかゾナータイプの特徴がニコン公式サイトに書かれています。F2と大口径でありながら、比較的屈折率の低いガラスで構成した場合でも、広い画角にわたってコマ収差の補正が良好なことで、これが開放からコントラストの高い描写を生み出すもととなっている。反面、非対称性の強い光学系であるため、糸巻き型の歪曲収差の補正が困難なことと、当時の低い屈折率のガラスの組み合わせではわずかに非点収差が残っているため、ボケの形状にはやや難点がある。このNikkor 5cm F2についても背景のぼけが周辺で三角形になることがあり、描写の特徴の一つになっている。また、非点収差は絞り込みによる性能改善の効果ががゆるやかであるため、絞りによる性能変化は少ない。
とあります。
とあります。
フォーカスリングの回転角は約300°ありしっとりとした感触で緻密なピント合わせには便利です。無限遠のロックがあります。
写りはピントがあったところから柔らかい描写です。色はコントラスト高めなでトーンは狭くカラーバランスはシアン味が強めです。絞ることで先鋭度とコントラストが少し上がりますが周辺と四隅の流れはあまり改善しません。
モノコートなので逆光に対しては弱くハッキリとしたゴーストが出てコントラストも一気に落ちます。レンズの味だと思ってガンガン楽しみましょう。シャワーゴーストが出ない点は褒められると思います。鏡筒内の迷光対策がしっかりとしている証拠です。
ボケには独特味わいがありがあり草木のような複雑な背景では輪郭が残って煩いボケになりますが、近接撮影でボケ量を大きくすると先ほどの癖が目立たなくなり背景の情報が程良く残ったいい感じのボケになります。いわゆるバブルボケが出やすいタイプで絞り羽根が10枚あるので絞ってもボケは綺麗です。
古いガウス型は球面収差や色収差によるハロやフレアを絞りを変えることでコントロールしていく感じですが全く違う印象でした。絞ってもオールドレンズらしさがしっかりと残るため色々と楽しめるレンズだと思います。
ちなみに上の作例は町田仲見世商店街。このレンズが発売された1年後の1947年にできた商店街で冴えないボロボロの店の集まりだったはずが一周回って昭和レトロな感じとなり最近人気があります。市川豆腐店はその中でも歴史のあるお店でオールドレンズには良く似合います。お店は営業日が木金土だけ(週休4日!)とか商品が言わないと出てこないとか、あっても値札がないとか、店が開いてても製作中とかかなりマイペースです。豆腐と厚揚げはとても美味しいので頻繁に買いに来ています。
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